2007年12月04日

奮闘記・第088回 読んでみた!/東京都

●本の分野● 小説


『明日の記憶』を読む


(2007年12月某日 東京都内・BOOK EXPRESS 赤羽店)



 佐藤は仕事がら、駅などで乗り換えの待ち時間が多いのですが、駅の本屋さんでの待ち時間はちょっとした楽しみのひとつです。

 特に、ここ赤羽駅のエキナカの書店がけっこう充実しているのです。スペースが限られているし、重厚な本が求められても置いてあるわけでもない。ちょっとした旅の「友」としての本が求められています。

 だから、時代小説から推理小説。単行本から文庫まで幅広く置いてありますが、何を切って何を入れるかは書店の方の考え次第。まぁ本はそれぞれの好みがあるから、佐藤に「よい」書店でも「誰にでも」良い書店とは限りません。

 さらに、地方を旅するときに、エキナカの書店をのぞくと、そこには、その地方に特化した作品を誇らしげに、ご当地もののコーナーを設けて置いてあるので、東京ではなかなか目に付かない本までも手に入れることができるので楽しみが倍増します。

 限られた空間の中で、読みたいなーと思う本に出会うと、書店員のエキスパートはこのようなエキナカの本屋さんにいるのでないかと思ってしまいます(笑。

 今回はBOOK EXPRESS赤羽店で光文社文庫『明日の記憶』を買いました。まぁこの本は文庫の新刊でどこでも売っている本でありますが(笑)。この本の内容は2006年に渡部謙と樋口可南子の共演で映画化されているので映画を見た方もいるかもしれません。佐藤は、残念ながら映画は見ていませんが。最近長いのを観ると目に来ちゃって。本は途切れ途切れ読めますからねぇ。

 それはさておき、内容は主人公が、若年性アルツハイマーと診断され、その病気の進行を、会社組織と同僚、妻、娘、娘婿や孫。そして、主人公が最後まで固執している趣味の世界などの場面を通して、主人公の不安や、自分が変わり、ある意味壊れてしまう恐怖と格闘せざるをえない状況を、様々な時代のシチュエーションに合わせて書かれており、主人公の感情をうまく表出させ、場面を展開しています。

 まず、仕事をしているときの主人公は、主治医の病気のことを会社の人には伝えておくようにという忠告を無視し、病気であることを隠して(当たり前だと思うが)、営業部長としての役割をはたそうとする。しかし徐々に症状が悪化。お得意様と打ち合わせをする時間を忘れてしまったり、大きなクレームが発生。さらには、得意先の会社へ行くときに道に迷い、待ち合わせの時間に遅れたり、それ自体を忘れてしまったりする。

 小説とはいえ、この時、主人公が「体験」する心の恐怖と不安は壮絶なものであろうと誰でもが想像できるもの。小説で見事に主人公の目線で、読者に「擬似体験」という恐怖を与えてくれる。だから、読むほうも、はらはらどきどき、たまらない(苦笑)。

 主人公はすでに自分の記憶の曖昧さに気づいており、対応としてその時々に自分が遭遇している場面をメモとして残すが、そのメモは記憶の量とは反対に背広のポケットの中で一杯になっていく。

 主人公に愛する妻と娘がいる。主人公は自分の異変を妻に相談。やがて精神科を受診。ある日、妻も同行し(医師から連絡)、「アルツハイマー」と告知される。

 小説の中で一貫しているのは、夫婦でお互いに「大切な人を失いたくない」という気持ちです。主人公と妻がお互いどう感じ、どうするかが、誰でもが行う日常生活として表現されています。まぁ病気にいい食べ物、進行を遅らせる食材、果ては少しあやしげなブレスレットなど。

 過酷な仕事や家庭生活を展開する一方、主人公の趣味の世界も重要な部分を占めています。呆けても呆けてなくても大事なんですよ、何かやりたいことがあるっていうのは。

 ラストのシーンは、学生の頃に主人公が、陶芸を学んだという場所を、主人公が訪問し、その場所までたどりつくことができるのかというどうか。最後のシーンは、う〜ん。呆然としました。

 佐藤も現役の介護職のころ、援助のために訪問した方が、訪問するたびにメモにあらゆることを書いていたことを思い出しました。

 私はその時に「凄いですねぇ。朝起きてから今までしていたことを記録しているなんて、なかなかできませんよ」というと、「そうなのよ。朝、顔を洗ったことも書いておかないとわからなくなるのよね。本当に困るわぁ」と話してくれましたっけ。

 そのときの彼女はにこにこと笑っていただけですが、今考えると彼女にすれば必死の行動だったのであろうなぁ、佐藤にすれば「まだ」他人事だったような気もしますねぇ。若いということは前向きなことに対しての想像力は豊かでも、現状維持や後ろ向きなものに対しては無関心ですからな。

 仕事がら、認知症という病気と向き合う利用者とのかかわりをもつ、介護職の方々には、まさしくお勧めの本です。自分の常日頃の言動や行動に変化をもたらすことができるかもしれませんよ!


図1 記憶に残る一冊、『明日の記憶』.jpg

図1 記憶に残る一冊、『明日の記憶』



【書籍データ】
 『明日の記憶』荻原 浩(おぎわら ひろし)・著
  光文社文庫、2007年11月20日発行、定価(本体619円+税)


(To Be Continued!)

posted by さとうはあまい at 15:27| 島根 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | 読んでみた! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております!お元気そうですね〜♪
『明日の記憶』読んでみたいを思っておりました。実際の症状とは違う場面もあるようで…
紹介して頂いたので、やはり読んで見まーす!
いつもブログ楽しみにしております\(^o^)/
Posted by t-akabane at 2007年12月06日 11:48
そうそう。病気はひとりひとり違うからね。
作者の表現力が凄いので、佐藤は、ぐいぐい引きずり込まれて読んでしまいましたよ。
Posted by さとうちよみ at 2007年12月06日 14:37
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