2007年10月09日

奮闘記・第043回 読んでみた!/東京都

●本の分野● 評伝


『わしの眼は十年先が見える

―大原孫三郎の生涯―』  を読む!


(2007年9月13日 岡山県倉敷市・大原美術館にて購入)



 倉敷にある大原美術館へ行ったこと書きました。そのときに美術館の売店でこの本を手に入れました。

 この本は大原美術館を作った大原孫三郎の生涯を描いた作品です。いやはや、読んでみて驚いた。大原孫三郎(以下、敬称略)という人は凄い、凄すぎる。

 最も、ただ彼がこれほど凄い人になったというのではなく、彼をとりまく様々な人間関係が存在していたことが彼を大きくする要因となったと思う。

 代々続いている倉敷紡績の家に生まれ大原孫三郎は、彼は他の友達で同じ境遇(資産家)の友人達とは違い、資産家でない友人(彼は少なくともそう考えていた)に利用され、いろいろな事件や問題に直面してしまいます。

 やがて、彼は心のそこから信頼しあえる友達を求めていくのです。それはもちろん並大抵のことではなく、艱難辛苦のうえ(というか知り合ったあとも続くのだが)、岡山孤児院の創始者である石井十次と知り合います。この人については介護福祉士の国家試験にも登場する人物だから、知っている人も多いでしょうね、え? 知らない? それはちょっと(笑)。

 大原はこの石井の生き方をみて、感じ、その人物を尊敬するようになりました。クリスチャンである石井氏の影響を受けて、自らもクリスチャンとなるのです。そして、必ずしも石井とは考え方が一致するわけではないが、結果として彼を支え、多くの活動資金や生活の援助をおこなってゆきます。

 また、大原の援助は誰それとうだけに終わらず、たとえば画家の小島虎次郎も、その才能や、真面目な人間性に引かれて、大原の援助を受けます。

 小島にヨーロッパを見聞させ、彼自身の能力も磨かせながら、一方では、小島虎次郎が気に入った絵の買い付けをさせていきます。この絵画がやがては大原美術館をつくる基盤になり、やがては倉敷を戦禍から守る要因の一助となっていくのです。このことは先だっての岡山での見聞録の稿で書きましたので繰り返しません。

 このような経緯を読んだだけでも凄いなあー!と感心するのですが、もっと、凄いことは、彼が、自分の会社で働いている女工さんたちを大切に取り扱っているという部分です。

 明治終わりの頃、日本は紡績業が盛んで、倉敷紡績も多くの女工さんが働いていました。この時代は、生産性の高い機械そのものを大切にしても、それを操る人間の処遇は、劣悪なところが多かったのです。しかし、結局は当時の共産主義運動など、社会運動や戦争とのかかわりでなかなかうまくいかないのですが。

 たとえ、自分が非国民といわれようが、正しいことは正しいと言い、自らを律しながら、このようにふるまえることの素晴らしさ。常に10年先のことを考えて今を生きている姿は凄すぎます。

 この本を通して、自分とって大切なものとは何か、また、真の「援助」や「友情」について考えさせられました。これは「自立支援」とは何かについても考えることができます。

 誰でも100%の援助は助かる。でもそれで誇りは維持できるのか。その援助は続くのかという問題は今でも介護保険等でぶつかるテーマでもある。

 この本を読み終えた今、再び、倉敷の町を歩きたい。大原親子がその一端を築き、倉敷の人々が誇りを持って残したあの町を歩いてみたい。素晴らしい人々の手でが作られた大原美術館という「思想」を、今一度感じてみたい、と思うのです。読んでから、見るか。見てから、読むか。どちらにしろ、再び行きたくなることには変わりがない(笑)。一読の価値ある本でした。さすが城山三郎先生。



【本データ】
 『わしの眼は十年先が見える −大原孫三郎の生涯−』
  城山三郎・著、新潮文庫、1997年刊、552円(税別)
 

図1 読んでみちゃいましった!.jpg

図1 読んでみちゃいましった!


(To Be Continued!)
posted by さとうはあまい at 13:10| 島根 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 読んでみた! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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