2019年07月31日

奮闘記・第1087回 研修会のツボ/東京都

●2019年● 東京都千代田区


公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

2019年度 社会福祉法人等が経営する社会福祉施設・事業所職員向け合宿研修会
4日目「対人援助技術・介護記録の書き方トレーニング」
【第2部】



今回の研修は、2部構成である。第1部は、『対人援助技術』についてで、内容は前回の第1086回でにて報告済み。今回は第2部の『介護記録の書き方』についての報告である。

少し間があいたので、参加されている方について案内しておこう💛
この研修は公益財団法人 社会福祉振興・試験センターさんが主催している合宿研修であり、受講するにあたっての条件を定めて、その条件をクリアした人々が、この会場に集っているのだ。

その条件はいくつかあるが、かいつまんで案内する。

『公益的な活動を実施し地域貢献に取り組んでいる、または公益的な活動を計画し地域貢献に取り組むことを予定している社会福祉法人等が経営する介護報酬指定施設・事業所で働く生活相談員・介護職員・介助員・介護支援専門員等』
『介護業務の経験が通算して3年以上でかつ本研修受講後も引き続き当該施設や事業書に勤務する意志を有する者』
『本研修会に参加経験のない者で、研修開催機関において研修会場の宿泊施設に宿泊できる者』

となっている。

事務局の好漢・S氏曰く、「今回の参加者は3年目から上は20年を越える方が参加しています」とのこと、すなわち経験豊富な方が揃っているということなのである。

●思い出を語り合う●.jpg

●思い出を語り合う●



■研修会で行ったこと
(1)自己理解・他者理解
(2)自分のパーソナリティーを知り、他者と関わる傾向に気づく
(3)介護記録には何を書くのか
(4)事例を把握し、介護記録に挑戦する


※(1)(2)は前回報告済み。今回は、その第2部は、(3)(4)を報告したい。

■第2部
3.介護記録には何を書くのか
ここでは、テキストを用いて、ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)について説明を行った。そして、この考え方は平成14年に日本語に翻訳されて、厚労省のホームページに掲載されている。

まぁこの翻訳自体はいろいろあって、実際専門家のPTさんたちの中には「原語」(WHOゆえに仏語版もあるだろうが、とりあえず英語版)で読んだほうがいいという方もいる。

われわれ門外漢はそこまでやらんでもいいとは思うのだが、素人が比べても言葉のニュアンスが本来の意図とは微妙に変わっているように思えるくらいに「手が入って」いる。

それはさておき、さらに平成26年には、サービス提供事業所の果たす役割は「利用者の心身機能能維持向上・活動の維持向上・参加の促進」これらの役割を果たすことで「家族の(環境)の負担軽減」に繋がる、ということを説明。


●グループの会話に耳を傾ける●.jpg

●グループの会話に耳を傾ける●


●他者に気遣い肩をもむ●.jpg

●他者に気遣い肩をもむ●



そうであるならば、介護職が、利用者の介護計画に沿って必要な援助を行い、モニタリングをして、利用者の生活機能(心身機能。活動・参加・環境)が維持・改善・悪化しているか適切な評価を行う必要があるはず。

そこで、介護記録には、利用者の生活機能を意識した記録が求められるということを説明した。

そして、実際の介護記録の場合、多くは、利用者の健康状態の推移は記載されているのだが、利用者が日常生活動作で「していること」や、職員のかかわりによって「できたこと」の記載が少ない傾向がまだあり、逆に「できなくなったこと」については記載されていることが多いことが上げられる。

さらに、参加の項に至ると、「○○に参加した」という記録は有るのだが、その時々の利用者の状況や職員の意図的な介入などについては特段明記されないため、実際介護職の支援が「どのように利用者の意欲の向上に繋がったのか」が見えてこない記録が多いことである。


例えば、医療職は、利用者の健康状態を掌握することが専門であり、その記録は体温や、血圧、飲水量や、排せつの状況など、数値の記録が重要な意味をもってくる。また、「頭が痛いと言う」「腹痛を訴える」などの簡潔な記録が求められている。


●昼食を頂く●.jpg

●昼食を頂く●


●自分で考えるを見守る佐藤●.jpg

●自分で考えるを見守る佐藤●



一方、介護職は、利用者の日常生活動作(活動)について、必要な援助をするたびに、利用者に対して、「これからすることを説明し、本人の意向を伺い、同意を得られた場合に必要な援助を行う」のだが、同意が得られない場合には、なぜ、それをしたくないのか理由などを聴いて、その方が必要な援助を受け入れて頂けるように「話し合う」のだ。

必要な援助を行うときには、その時々利用者の状況に合わせ(随時アセスメントし)、本人のしていることやできることは本人にして頂き(するように励まし)、本人のできない部分を、本人が希望する方法で行う。

これって、文章を読んだだけでも非常に手間のかかる作業なんだけど、経験を積んだ職員で有れば、このかかわりを瞬時に判断し、行ってしまうのである。

だから、職員にしたら当たり前の行為なので、そのためにした(行った)、「介護の手間」を省いてしまいがちである。その結果、文章は「車いすへ移乗すると、ひとりで食堂へ出られた」などとなってしまい、これではまるで「その方がひとりで車いすへ移乗し、食堂へ行った」かのようにとられてしまう記録ができ上がるのだ。

まあねぇ・・・、介護の手間の記録を書くと長くなりますからね。だったら、したことは、タイトルとして明記し、その下に介護技術を記載するようにしても良いのではないかなぁと思う。


●発表者を選択●.jpg

●発表者を選択●


●記録を読み込む●.jpg

●記録を読み込む●



【タイトル】
『車いすへ移乗すると、ひとりで食堂へ出られた』
昼食のご案内に居室へ訪問する。本人はベッド上で、新聞を読まれていた。昼食の時間である旨を伝えると、「もうそんな時間か・・・」と言いながら時計を眺める。さらに「じゃあ起こしてくれるかな?」と言われたので、「もちろんです」と答える。そしてベッドサイドに車いすを置くと、自分で布団をめくり上げ、上半身を起こす。足をベッドサイドへ移動することを説明し、本人の動かし方に合わせて、両足を手前に引き寄せた。本人はサイドレールに手を置いて、体を回転させ、端座位をとった。車いすを所定の位置に置くと、自ら車いすのアームサポートに手をついて立ち上がると、向きを変えて車いすへ着座した。自分は、転ぶことが無いように注意を換気し、同時に転ぶことがないように見守った。

まぁ、これはほんの1例であるが、利用者のしていることやできること、さらに職員がしたことがリアルに伝わってくるのではないだろうか。

(文章が長くなるのは、これら例文の状況説明が「初めて語る」人々に向けて書かれていることにもよるだろう。初対面でいろいろな状況説明を省きまくるわけにもいかないからだ。これが同じ組織や団体の中で、ルール作りができて居れば、それ相応に短くできるはずである。)

職員は、利用者同士の交流や、家族や地域(環境)との交流の支援も行っている。これも、職員の意図的介入があってこそ、はじめて成り立つ支援と言える。

それが「○○さんと、七夕飾りをつくった」「園児との交流会に参加した」という記録(記載)にしてしまっては、「身近な観察者」としての職員の「存在の雰囲気」はわかるだろうが、「介護者としての職員の行動」は、読み手(他の職員や家族等)には伝わってこないだろう。

さらに、多くの施設では利用者の手段的日常生活動作(家事活動)を職員が代行していることが多い。それは、もしかしたら「利用者のできること」を奪っている可能性もある。

利用者の中には、そのような家事活動も個別によってできることや、(自分で)したいことなども有るはずだ(無い人もいる)。可能なことであれば、その作業に参加(役割の提供)して頂くことも重要なことではないかとも伝えた。ふう!

佐藤は、職員が利用者にしている「励まし」「注意喚起」「称賛」や、「協力動作を依頼する」「感謝を伝える」「労をねぎらう」など、これらの行動が一括りで「声かけ」という言葉に置き換えられ、明記されてしまうことが残念(書くのが楽だが、評価はされない)で仕方がない。 

加えて、「見守り」「放置」はイコールではないこと。見守りとは、「そばに付き添い、本人を励ましたり、できることを称賛する。また労をねぎらう」などの行動を指していることを伝えた。


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●仲間を励ます参加者●



4.事例を把握し、介護記録に挑戦する
午後からは、佐藤が得意としている、逐語文(ダイアローグ方式)のダイナミックな事例を元に皆さんに提供してみた。

皆さんにはその事例をひもといて、介護記録や相談員記録にチャレンジをして頂いた。今回の物語は、「お正月に外泊をしていた利用者が、予定より早く施設に戻ってくる」という内容である。まぁ、いわゆる想定外の出来事ですなぁ。

その出来事を、幅広い場所から捉える、いわゆる「鳥瞰」による説明と、相談員対家族、あるいは介護職対利用者による、「各場面設定」ごとの説明を行い、その上で実際の支援をし行っている場面を説明している。それらはタイムテーブルによって区切られているのだ。

簡単に案内してしまうと、お正月に外泊していた利用者が、予定を繰り上げて帰ってくる場面から物語が始まり、帰ってきた利用者の大腿部に打ち身と傷が・・・。

「やや、これはもしや娘宅で何かトラブルがあったのでは?」と思われるも、本人がなかなか素直に口を割らない(犯人かい!)。

そこで相談員や担当職員、看護師、介護支援専門員が密談し、それぞれの立場から利用者や家族にアプローチし、「いったい何があったのか?」と追い詰め、いや明確にしていくといった筋であり、まるで推理小説まがい(推理小説のまがい物とも)の事例なのである(笑)。

佐藤が「一人語り」で読み進める(ギターなどはなし)。
それでも最低15分はかかるのだ。いや〜、「また」大作をつくってしまった!(笑)

当然、この物語の登場人物の1人の介護記録をすべて書くことは無理。そこで、皆さんには、「時間別」に出来事を選択をして頂き、その場面で起こった内容について記録を書いて頂いた。

自分で考え、グループで語り合い、発表を行う。自分で考える時間は5分。

佐藤は皆さんが取り組んでいる間に会場をまわったが、皆さんは記録研修などいるのかいな?というくらい、ふつうに長文を書かいていた。

そこで「いつもこんな(長い)文章を書くの?」とたずねたら、「いつもは、『排泄介助・衣類着衣時痛みを訴える。医務室に連絡。』位かな?」ですとw。

「では、なぜ、今は長文なのか?」と畳みかけて質問すると、「ここに場面が書かれているからですよ。いつもは、自分がしていることを細かく覚えていないし(笑)、書く時間もないですから」

そうなんだ・・・。覚えてない(笑)って。これ、笑いごとではない。本来で有れば「ワンケア・ワン記録」が理想なのだから。

まぁ、職場内の環境にもよるが、常に書き込める環境で有って欲しいものである。また、記録は、手書きやパソコン入力であったり、中には、タブレットで入力をしている方もいた。機材については、まぁそれぞれ事業所の都合と言うところもあるだろうな。


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●ささ、質疑応答の時間ですよ●



さてさて、最後はグループ発表である。

発表したいチームに挙手を求めたが、(だいたいそうだがw)残念ながら手は上がらない。そこで、その日は7月4日だったので、7グループと、4グループ、最後は11グループに前にあるホワイトボードに板書を依頼した。

皆さんが選択した場面は、職員が実際に支援している排泄介助の場面で有る。それぞれ、必要事項を漏らさないように記載してあり、記録として何が求められているかは理解されている(ようであった)。

これは、ごくごく当たり前のことではあるが、職員は何を書くべきなのかを理解すればちゃんと記録はできるということでもある。まぁそこからが・・・これから・・・だね。

その上で、佐藤が作成した解答例を配布した。

佐藤は、例題に登場した専門職の、介護職員はもちろん、看護師・相談員・介護支援専門員の記録を解答例として作成しておいた。その記録は、各専門職が使用しているであろう帳票を用いて、今回の物語を、時系列に書いてある。

それらの記録物を、介護職員の記録を中心に、相談員や介護支援専門員の記録を案内した。特に介護職員の記録は項目欄(心身機能・活動・参加・環境)など、いわゆる生活機能分類の言葉を用いてその内容を記述した。

皆さんは実際に今自分たちが取り組んだ場面が細分化されて書かれていたことから、ため息混じりに「このような書き方もあるね・・・」などとつぶやく声も聞こえてきた(笑)。

まぁ、今回の記録の書き方は、あくまでも私が求めて(求め続けて)いる内容であり、このような記録があれば、職員同士に伝わる記録となる上、モニタリングやアセスメントもしやすくなると考える。第一、利用者や家族が読んでも「差し支えない」ものである。

佐藤は介護記録の研修を行う際に、声を大にして伝えていることがある。それは、各事業所に即した「介護記録のマニュアル」を作ることである。

皆さんから聞こえてくる声は、「時間がないから書けない」「上から簡潔に書けといわれている」「こんなに書けない」などなど。

そうであるならば、まずは各事業所に合った「介護記録マニュアル」を作ることから始めて欲しい。多くの事業所に「○○検討委員会」があれど、なぜか、「記録検討委員会」なるものの存在は聞かれない。

さらに、記録を書く時間がないのであれば、業務分担表に、記録の時間を設ければ良いはずだ。記録時間は5分程度である。忘れないうちに重要な要点を漏らさず書いておく。このように、まずはその段階で自分の事業所に適したマニュアルができていれば、さらに働きやすくなるのではないだろうか。

さてさて、最後に質疑応答の時間を5分間設けた。なぜならば、事務局の片倉氏からぜひ質疑応答の時間を取って欲しいと依頼されているし、卓上にそのように書かれたメモが置かれていたからだ(笑)。いつでも事務局さんに協力しないとね!

でも、「質問はないですか?」と前方から問われても、なかなか手をあげにくいのも人情である。そこで、佐藤は、会場をめぐりながら、特養にごとく、「いかがですか?」と促しつつ、たずねまわった。

すると、1人の方から「この項目に書かれている生活機能の言葉は、とらえ方によって項目も変わってくると思いますが、それはそれで良いですか?」という鋭い質問が出た。

そう、その通り! なぜならばICF(国際生活機能分類)の概念(概念図)には、相互作用がある。だから、その時々よって心身機能・活動・参加の項目が変化することもあるのだ。

佐藤は、質問の通りなので、その時々状況に合わせて利用するように、そしてそこに「この分類の概念」を使用したのは、心身機能に偏らない記録を求めているためである、ということを説明した。

さてさて、朝の9:00から、15:15までの長時間にわたる研修はこれにて終了。

最後に再度「これなんだ」さんが登場(何か?を飲み込んだうわばみの話)。これは、皆さんに、「同じ人」であっても、毎日「同じ状態」「同じ心境」ではないことを理解し、毎度新鮮な気持ちでかかわって欲しいということを伝えて、佐藤の研修の幕を閉じたので有る。

さてさて、参加者および主催者の皆様、お疲れ様でした。

長かった梅雨もドカンと明けて、一気に猛暑となってしまいました。皆様、どうぞ、ご自愛されながら、華やかな活躍を願いしますよ! ではまたいつかお会いしましょう!!



●諏訪坂をおりて帰ります●.jpg

●諏訪坂をおりて帰ります●


(To Be Continued!)
posted by さとうはあまい at 14:33| 東京 ☀| Comment(0) | 研修会のツボ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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