2011年04月20日

奮闘記・第701回 読んでみた!/東京都

●本の分野● ドキュメンタリー


吉村 昭・著

『三陸海岸大津波』を読む!



佐藤は、震災当日、島根県にいた。松江のホテルで、東北や関東の町を覆っていく津波のシーンが繰り返し、繰り返し、放映されているテレビを食い入るように見つめていたのだ。


昨今、地球温暖化が原因か、たまたまそういう時期なのか、外国の津波や地震、火山の噴火などが世界各地で頻繁に起きていた。


なにしろ、人類で、何万年も続いた文化はないのだ。1〜2万年単位で休んだり、噴火したりする火山噴火の法則や、長い目で見れば一定の割合で発生している震災にも、「我我の時代には来ない」という甘い認識で生活しているところに、大地震と津波、原発事故が連動して起きてしまったのだ。


まぁ、ここ数年、刺激的な映像は多かった。しかし、紛争でも、災害でも、それらは日本の出来事ではないものをながめていたのだ。


ところが、去る3月11日、突然、我々日本人は、世界の大惨事の被災地(佐藤は関東にいなかったので被災はしていない)になってしまった。


震災から1か月。佐藤は、仙台へ行き、その現実を目の当たりにした。テレビ画面でみる被災地と、実際に行って見た被災地は違うのだ。現場に行くと、その規模の大きさ、水の強さ、痛めつけられその場の醜さが気持ち悪いくらいにわかる。


佐藤は、仙台の知人が言っていたように、見て、あったことを伝え、書いた。


過去にも大津波に関しての記録本(ノンフイクション)はさまざまある。今回は、評判がよく、比較的手に入りやすかった津波のノンフイクション、吉村 昭(よしむら・あきら:1927 - 2006年)氏の『三陸絵画大津波』(1970年作品)を文春文庫が再刊されたので、読んでみた。


吉村 昭氏と言えば、海洋物や史実に即した歴史物で評価が高い作家である。佐藤は、あまり吉村氏の良い読者とは言えないが、『長英逃亡』(1984年作品)などの筆力は凄まじく、あたかも自分が高野長英になったかの如く、臨場感があったのを覚えている。


吉村氏は、三陸海岸の景色が好きで何度も三陸海岸を旅した。海岸線をたどったり、海上に舟を出して、断崖の壮絶な美しさをみあげたこともあるそうだ。


旅の途中、地元の方々と話をする機会も増えて行く中で、ひとりの婦人より津波の話を聞いた。彼は、その話に触発されて、津波の事について調べ始め、この天災を「記録」として残そうと考えた。


東北地方の太平洋側、青森県南東端から岩手県沿岸部を経て、宮城県の牡鹿半島までの海岸を総称して三陸海岸と呼ぶ。その長さは、総延長で600km余りあり、日本有数のリアス式海岸である。


この地域を明治29年と昭和3年に大津波が襲った。明治29年は、明治27年に起きた日清戦争が、日本海軍の力をして明治28年には勝利し、東洋の大国の位置を占めていた時代であったが、そのような時代でも、まだ、この三陸沿岸地方は時代の恩恵からは、遠く見はなされた僻地に過ぎなかった。


深くくいこんだ無数の湾内におは小さな漁村が点在しているに過ぎず、内陸部と通じる道路はほとんどなく、舟を頼りにした海上連絡があるのみで、陸の孤島のような存在であっただろう。


我々は考える。なぜそのような地域に住む人がいるのだろうか?


このリアス式海岸特有の入り組んだ入り江や、深い海は、魚介類が多く住む豊かな海をつくり出し、文明の恩恵こそ、受けられないものの、自然の恩恵は有り余るほど受けられるたのだ。


当時の被災者で生き残った方々のインタビューは貴重である。死んだ人と、生き残った人との紙一重の差がそこに浮き出されてくるようである。


地震や津波は、その兆候があっても、“こういうふうに来る(起きる)”という定説や迷信が毎回通用しない相手であるということがわかる。


ここには、助ける側のドラマも、助けられる側のドラマもある。吉村氏は淡々とそれらを記録していくのだ。ただ、残念なのは、吉村氏の欠点でもあり、視点が合えば美点でもあるだが、“勧善懲悪”の視点があることである。


たしかに、史実を外れていなければ、その人物をどう「評価」しても、ノンフイクションとしての問題はないだろう。吉村氏の卓越した取材力とその筆力に相反して、申し訳ないが、少し基準が古臭いのだ(笑)。


明治二十九年の津波、昭和八年の津波、そして、海外からの余波、チリ地震津波を扱っている。ノンフイクションとしては一級である。しかし、資料がなく、“付加的な考えは書かない、記録に徹する”という考えで書かれているためか、やや短い気がする。


もし、これが最後に「津波は何度でもやってくる。そして何度でも人は被害にあう」という視点で書かれていれば、今回の大津波への強烈な警鐘となっただろう。


“人類なら切り抜けられるのではないか?”という視点は、被災者を取材する吉村氏の温かい視点である。ただ、津波は勧善懲悪という人間的な考え方が通用する存在ではない。被災者へ視点を合せたために、自然災害である大津波への視点はやや甘いような気がする。


まぁ、これは読者の読み方それぞれでよいものでもある。今回の津波を見たら、吉村氏なら、どう結末に手をいれただろうか? それとも……。そう思う楽しみも許されるのではないか。まさに「天災は忘れたころにやってくる」。そう教えてくれる記録でもあった。ぜひぜひ未読の方にも読んでもらいたい。



●本のデータ●

吉村 昭・著

『三陸海岸大津波』文春文庫、438円+税、2004年


●『三陸海岸大津波』とあかべぇ●.jpg

●『三陸海岸大津波』とあかべぇ●




追伸

復興支援のための増税とやらで、民主党と自民党で話が合わないようだ。民主党は復興国債と消費税の期間限定の増税。自民党は、被災者からも税をとることになるから良くないので、所得税や法人税の増税だという。


ちょっと待ってくださいな。復興も大事だろうけど、我々の生活はどうなるのさ。なんで、地震や津波でやられてない地域が増税されなきゃならないんだ? これも嫌だが、平等なら消費税でやるのが筋だろう、期限付きで。


もし、われわれ関東人が大地震で被害にあっても、全国民の四分の一が被災することになり、国も他の地域も支援らしい支援は難しいであろう。我々も家を建てろだとか、復興しろなどとは、願っても主張はできないだろう。財源がないのだから。


それを被災していない他の県に増税して、お金を取って助けてくれとまで言うことはできない。みんな大変なんだもの。震災前の日本は「不況」だったのを覚えてないのかな。


大都市でさえ、大学出ても就職先がなく、リストラされたオジサンたちが家族を養えなくて、電車に毎日飛び込んで自殺してる状態だったんですよ。それを知らない人まで養えと言うのですかね。


ほんとうに忘れやすい民族だ。だから、何度も津波が来て被害にあっても根本的な対策を立てられないのだろう。


これが慣習化し、大災害があるたんびに、所得税や法人税を増税されたんじゃ、生活できないよ。まず、国と自分たちでやれる範囲でやるのが筋でしょう。消費税なら協力したくないものは買い控えることもできるのだ。選択の余地がほしいね。


今までの大震災でもそこまでフォローしてないだろう。まったく平等じゃないな。他人の財布の金で復興するなんて世界の常識では考えられない。


原発事故の福島県はともかく、自然災害にそこまで肩入れするような、余裕が日本人にあるのかい。自民党もそういう無神経なことはやめて頂きたい。これじゃ、民主党ではなく、自民党へなんて危なくて変えることもできゃしない。


やるなら、まず、議員さんの給料を期限なしで半分にしてくれ。また、使える建物があるのに、不要に高層ビルの役所や議員会館などを建てんでくれ。


これをやってから考えてほしい。生活保護と同じく、支援の上限をきちんとつけるべきだろう。生活保護だって批判は多いが、審査はきちんとされているし、上限もある。少なくとも災害給付よりもきちんとしている。


地元の人の話では、被災地でも、被害に遭っていない、困っていない人まで、わざわざ配給品をもらいに、被災者のような顔をして列に並んでいる者もいるという。


被災地の人も「いかんな」と思っているそうだ。海外へのODAよろしく、こういう垂れ流しの支援をしていると、我々も支援しょうという気持ちはそうそう長くは続かない。まずは、くれぐれも、自立支援でいかんとな。


福島県の原発事故は別だ。安全対策や、近隣の住民まで含めてお金がかかるのは、ある程度仕方がない。


あれは我々だけではなく、全人類が直面した未曽有の危機である。そしてまだ終息していないのだ。そんな中で、残念だが自然災害の被災者まで長期的なカバーをする国力はいまの日本にはないのだ。偽義援金はもちろん、ゼネコンが震災でひと儲けしょうとするならさもしい。


言いたいことが言えない雰囲気のまま、太平洋戦争に突入し、国が一度滅んだことを忘れてはいけない。


(民主党の桜井充財務副大臣が「内閣の一員は全部、(首相が)間違っていようが何しようが、『その通りですね』と言わなきゃいけないのか。私はそうだとは思わない」と述べていた。そのとおり、いわんや国民をや!To Be Continued!!)
posted by さとうはあまい at 13:09| 島根 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 読んでみた! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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