2009年03月31日

奮闘記・第432回 読んでみた!/東京都

●本の分野● ノベライズ

『おくりびと』(百瀬しのぶ)

〜人はみな、いつか「おくられ」てゆくのだ〜


(池袋西武・リブロにて購入)



 今回読んだのは、2009年2月26日に、第81回・米アカデミー賞外国語映画賞日本映画作品で初受賞(名誉賞時代を入れれば四度目、外国語映画部門となっては初)となり、注目を集めた『おくりびと』(滝田洋二郎監督)のノベライズである。

 実は、まだ、佐藤はこの映画を見ていない。この本は、一人の男性(大悟=映画では、本木雅弘さんが主演)が仕事にあぶれるところから物語が始まる。

 主人公の大悟はチェロ弾き、演奏家なのだ。しかし、所属するオーケストラが解散。自分が幼い頃から目指していた演奏家への夢が立たれた。

 借金してまで購入した新品のチェロも、ローンが払える見込みがなくなり、楽器専門店に新品同様で買い取ってもらうことになる。そして、彼は東京には見切りをつけて故郷へ帰っていく。

 その後、故郷に帰った彼は「“旅の手伝い”をする人求む」「年齢問わず・高給保証・実質労働時間わずか」という、やや怪しいキャッチフレーズに誘われて、とある事務所に入る。そう、旅行代理店と勘違いしたのだろう(笑)。

そこの社長さんと、面接。社長は履歴書をみて、「車の免許を持っているか?」を確認しただけで「よし、採用! 明日からきてくれ」というのだ。実にあやしいでしょ?(笑)

そこで、大悟は、初めて仕事内容を知ることとなる。給料は片手、50万円(!)。まずは社長のアシスタントとして働く、その仕事は「のうかん(?)」という。

 出来のいい、パソコンの変換メソッド(ATOK)でもすぐには出ない。大悟も頭の中でこの言葉をうまく漢字変換できない(笑)。

 すると、社長が「遺体をお棺に納める仕事」であると説明したのだ。ここで、やっと大悟は、旅のお手伝いの仕事を理解したのだ。(「話が違う!」)そう思った大悟は、いぶかしがる社長に、募集広告をみせた。

 社長はいう、「これは誤植。“旅のお手伝い”ではなく、“安らかな旅のお手伝い”なのだよ」といった。

 これには大悟も参ったろう。さすがに、ここまで話を聞いてしまえば、いくらお金が欲しくても無理。絶対にこんな仕事はできない、と思ったのである。

 社長もさすがに察したようで、これも何かの縁だ。とりあえずやってみて向いていなかったら辞めればいいさ、とりあえず今日の分だといって2万円を手渡す。もし、一晩たって、やる気があったら明日も来なさいといって別れた。

 大悟は、自分にはこのような仕事はできない。なにせ、つい最近まで演奏家だったのだ。明日には断るつもりでいた。

 胸にもやもやしたものがありながらも、大悟は手にしたお金で米沢牛を買い、自分の帰りを待つ妻の元に帰った。

 何も知らない妻は、良い仕事が見つかったのだと思い込み、大いに喜んでいた。大悟は、妻の喜ぶ顔を見てしまうと、「旅のお手伝い」とは、実はどんな仕事であったのかを、とうとういうことができなかった。

 大悟自身は仕事を続けようか、辞めるべきかを悩んでいた。その時に初仕事が入ってきたのだ。それは、なんと焼けただれた遺体の納棺であった(ひぇー)。大悟は、死体から湧き出る臭い、その感触に思わず嘔吐した。

 次の日、このような仕事は自分には出来ない。断然、断る。それどころか職場にも行かなかった。

 もはや、あてもなく、ぶらぶらと川原を歩いていると、そこへ、社長の車と遭遇。「乗れ!」の言葉とともに、有無を言わせず車に乗せられ、納棺現場へ、またもや連れて行かれてしまう大悟であった。

 彼は、社長の見事な仕事ぶりを見た。そして、同時に自分の家族の突然の死を受け止めなければならない遺族の姿を見たのだ。納棺師という仕事に対する、「ある種の偏見・嫌悪感」をもっていた大悟の気持ちにある変化が生じ始めていた。

 無残な姿となった遺体は家族も辛い。その無残な姿でさえも、納棺師によって修復されていくのだ。その作業(嫌な言い方ではあるが)の過程で、家族が身内の死を受け入れ、死者を見送る心の準備ができてゆく、そんな瞬間を目の当たりにしたのだった。

 この瞬間、大悟の中にあった「偏見」が崩れ去っていったのだ。いつしか大悟の気持ちも、遺族に死者を見送る心構えを整えるお手伝いする「納棺師」へと変わっていた。しかし、その時点で妻は大悟の仕事内容については何も知らない。

 ある日、妻に、自分が全裸でオムツを当てて死者のモデルとなっている納棺師のための教育ビデオを観られてしまう。

 妻に問い責められる大悟も自分の仕事についての言いわけはしなかった。大悟の仕事に猛反対する妻は家から出て行った。その後も様々な葛藤を繰り返し、本当のプロの納棺師へと成長してゆく。

 ノベライズでは、大悟の生育歴などが盛り込まれ、巧みなストーリー展開がなされている。この場面も結構意味深く、読み応えがある。ある意味、これはお葬式入門書かもしれない。

 そして、とある日。妻は大悟のもとに子供を身ごもったことを伝えに戻る。重ねて仕事をやめて欲しいという思いとともに。

 その後も、人間模様を織り交ぜながら、情緒的な雰囲気で淡々とストーリーは展開していく。最後は、幼い頃に自分を捨てたと思っていた父親との再会の場面には感動させられてしまう。ヤラレタ!っていう感じかな。

 死とは語られてきたようで、語られていない。また、遠いようで近くもあり、近いようで遠くもある。なにしろ一度しか経験できないことなのだ。

 映画を観ても、観なくても。死について、考えたことのある人もない人も。この本が、死生観を見つめ直す、ひとつのきっかけを作ってくれるかもしれない。皆さんもお試しあれ。



■本のデータ
『おくりびと』百瀬しのぶ・著、小学館文庫
 2008年7月刊、本体438円(+税)


●サメ君と 『おくりびと』●.jpg

●サメ君と 『おくりびと』●


(読んでから観るか、観てから読むか。あれ?どこかで聞いたセリフが!To Be Continued!!)
posted by さとうはあまい at 15:31| 島根 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 読んでみた! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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